2025年度 第7回デジタルヒューマン協議会を開催しました。今回は産業技術総合研究所/多田様より「産総研におけるデジタルヒューマン研究とその応用:筋骨格から脳神経まで」をご講演いただきました。

25年積み上げた人体モデルと、動きを見える化する技術

産業技術総合研究所では約25年にわたり、人間の形状・機能・運動をコンピュータ上で再現するデジタルヒューマン研究を蓄積してこられました。200項目以上の寸法計測と3Dボディースキャナによる全身形状取得を組み合わせ、母集団を代表する統計モデルと個人別モデルの双方を構築できる体制を整えています。モーションキャプチャと床反力計、質量特性を組み合わせて関節トルクを算出し、作業中の身体負荷をリアルタイムにヒートマップ表示する技術も紹介されました。

<事務局コメント>
「見た目」だけでなく、内部の力学までモデル化できる蓄積があってこそ、デジタルヒューマンは人に寄り添う存在になり得ます。協議会としても、外観表現と身体性の両輪を意識した議論を続けていきます。

製品設計からヘルスケアまで広がる実装事例

製品設計への応用としては、立ち上がり動作時の膝負担を評価して手すりの最適配置に活かす事例や、電卓キーの角度最適化で筋負担を10%以上軽減した事例が紹介されました。筋肉を「線モデル」で近似することで計算量を抑えつつ、必要な精度を確保している点も実装上の重要な工夫です。

近年は立位CTを活用した骨・筋を含む内部構造モデルや、神経筋骨格モデルを用いた歩行生成にも研究が広がっています。さらに、パーキンソン病のすくみ足に関しては、約4万通りのシミュレーションから4タイプに分類するアプローチが、アシストスーツやスマートシューズによる介入の最適化につながっていることが共有されました。

<事務局コメント>
身体負荷を定量的に見える化することは、製品の使いやすさだけでなく、医療・介護領域での個別最適な支援にも直結します。デジタルヒューマンが「人の能力を引き出す技術」として展開されていく方向性を、改めて確認できました。

人間中心CPSと介護DXへの展望

2018年以降の取り組みとしては、人のデジタルツインを軸にした「人間中心CPS」の構想が示されました。健康寿命の延伸、QoL向上、高齢社会の課題解決を目標に、工場での人ロボット協調、ウェアラブルセンサーによる屋内生活モニタリング、屋外モビリティ支援など多面的な応用が進んでいます。今後は5年計画で運動基盤モデルを構築し、介護DXの実用化を志向していくとのお話がありました。

<事務局コメント>
多田様の研究領域とデジタルヒューマン協議会の活動には強い親和性があり、今後も継続的に情報交換を深めていきたいテーマです。「人を支えるデジタルヒューマン」という方向性を、業界全体で広げる議論につなげていきます。

引き続き、デジタルヒューマン協議会ではデジタルヒューマンの社会実装を推進するために、活動に取り組んでいきます。

取り組みに賛同していただける会員様も募集しておりますのでご興味ありましたらこちらをご覧ください。